
僕がビートルズファンになって初めて本屋に行って買って読んだビートルズの本が「ビートルズの軌跡
このビートルズの軌跡
参考までに、当時はストーンズもフーもなにも社会的な知名度も人気や影響度においてもビートルズと比較すら出来ないほどだったし、音楽的にも日本では大きなヒット曲もほとんどなかった。当時はあまりにも差が歴然としていたのが現実だし、これら他のグループはビートルズを手本に音楽を作っていたのもまた真実の感想だ。このあたりの話は当時を生きた人でないと実感はないだろうけれど。
この本を読むと当時のことがやはり思い出される。ビートルズは日本では唯一、ミュージックライフだけが情報を提供していた。そして、それはあくまでファンの目、極端に言えばミーハー的な目でロックを追いかけていた雑誌だった。今のような評論や力をこめた思い込みもない。あくまで、彼らの情報だけでも十分にファンは喜んだしそれしか情報がなかった時代だった。ギターの弾き方だの、録音方法だの、作曲能力だのの話が出るのは、それからしばらく後だ。その頃は「凄い曲をどんどん作るカッコいいビートルズ」という程度。サージェントペパーもリボルバーも、作品の価値を語った連中はほとんどいなかったし、その意味にすら気が付かなかった。それがビートルズ解散時まであった日本のロックジャーナリズムだった。なので、ある意味好き嫌いは別にして、ロッキングオンが出てきて、ずいぶんロックの語られ方は変わっただろう。さらに言えば、いかにビートルズ自身がぶっ飛んでいた存在だったか。
40年を過ぎた今でもサージェントペパーやリボルバーがライブで語られるという事実をもってもそれはわかることだけれど、その作品の価値を超える作品もいまだ生まれていない。つまり、1966年や1967年では、これらの作品は語られる土壌は全くなかったわけだし、ファンの判断力もなかったということだ。
このビートルズの軌跡
ビートルズは今では神格化された存在だけれど、当時はファンは絶叫すれども、そのファンですらビートルズの真価はまだ知らなかった。どれだけ凄い才能に接しているかを知らなかった。実際に武道館にビートルズが来たときは、すでに今をときめく「リボルバー」を録音してからのことだった。日本のファンはあのアイドルの顔の下に、誰がリボルバーを作るビートルズを想像しただろうか。ファンはただ、アイドルであり名曲を歌うグループがそこにいることを喜んだし、それが彼らの「素晴らしき時代」だったのだ。それは誰も否定できないし、僕も素晴らしいことだったと思う。二度と起こりえない60年代のモノトーンの風景がそこにはある。
もっというなら、ビートルズが本当にその才能を評価されたのは、70年代の後半、もしかすると、80年代以降かもしれない。それが日本のビートルズへの認識であり、それが日本の成熟度の現実だった。ビートルズはそれだけの間、そして今もなお、社会の価値観が変われども、とっくの昔に解散して新曲すらないグループが、価値を失わずむしろその価値を増大させてきたといえそうだ。いや、もっと言うなら、ビートルズこそが作品発表以来「音楽の力」だけをもってあるときは劇的に、また時に静かにも日本や世界の価値観を変え続けてきたのかもしれない。そうだとすれば、相当時間はかかったけれど、それだけ作品が色あせなかった証明だ。当然だけれど、こんなグループは他には見当たらない。せめて、社会の変化に影響を与えたとすれば、あとはエルビスだけだろうか。だけどその力の持続力ではビートルズには及ばない。
休日がてら引っ張り出した本に、当時の思い出がよみがえった。それにしても、ビートルズはなんと時代の流れにも風化せずに今に至ったことか。それどころか、散々もう古いだのなんだのと批判されようとも、一向に消え去らない彼らの存在感とはなんなのか。解散から37年。
新しい音楽は次々に出現し、そのたびにビートルズは過去のものとして扱われようとしたけれど、結局はハードロックもプログレもパンクもグランジもビートルズより先に過去になってしまったようにさえ思う。
今でも思い出すけれど、「ロッキングオン」の第一号の特集記事は、「ビートルズを葬り去るために」というような記事だった。つまり、ビートルズを忘れ去って新たなロックを語ろう、というようなテーマだったと記憶しているけれど、1970年当初、それは成功したかのような勢いでレッドゼッペリンやプレグレ、アメリカンロックの台頭を迎えた。しかし、今はその編集長だった渋谷陽一氏と松村雄策氏自身がビートルズを葬り去ることが出来なかったことを証明するがごとく、いまだビートルズを語り続けている。もちろん、彼らもビートルズファンなんだけどね。
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